【冬にまたあそこへ】女「ねぇ・・・星見に行かない?」。星空の下で女が男に語った内容とは・・・そして、ラストに男は生きるとは何かを学ぶ・・・・

夕方、少し空が赤くなりはじめたころ、カトウと俺は長野から東京に帰ってきた。

 

カトウ「とうちゃーく」

 

俺「ケツいてーw」

 

カトウ「お疲れ!」

 

俺「おう、お疲れ!」

 

俺の家の前でちょっと喋ってカトウは帰って行った。

 

長野での2週間とちょっと。

 

一生忘れないだろう。

 

そして冬にまたあそこに帰るために早速バイトを探し始めた。

 

帰るのか、あそこは俺の二つ目の故郷になったのか、ちょっとニヤけてしまう。

 

バイトはすぐに見つかった。

 

人手が足りなかったらしく、

カトウに誘われ二つ返事でOKした。

 

まったく、しかたないな。

 

本音を言えば知ってる人が居ないと嫌だから。

 

結局カトウには頼りっぱなしだが、

それでも俺にとっては大きな一歩だ。

 

バイト先は近くのマックになった。

 

シフトは今ではカトウより俺のほうが多く入っている。

 

フリーターだから。

 

厨房でハンバーガーを作ったり肉を焼いたり揚げたり。

 

カトウは主にレジをやって

たまに厨房もやったりするオールラウンダーだ。

 

慣れないうちは

ヤケドもしょっちゅうしてたが

最近はそんなことも少なくなってきた。

 

ある日のシフトで、

俺とカトウとマネージャーの3人で働いていた。

 

平日の夜だから客も少ない、

だからストックしてある肉の数も少ししかない。

 

オーダーが入った。

 

チキンフィレオか、

確か肉はラスト一個あったな、

と思いトレイを出して見ると入っていない。

 

なぜだ?マネージャーを見ると

口がもぐもぐしている、

やられた…カトウはレジでお客さんに

「お持ちいたしますので少々お待ちください」

と言っている。

 

そして客が席につくと厨房の方にきて爆笑している。

 

マネージャーもニヤニヤしながらもぐもぐしている。

 

俺もちょっと不機嫌そうな態度でニヤニヤしてしまう。

 

なんだかんだいいバイト先を見つけられて良かった。

 

まあこれもカトウのおかげなんだけどさ。

 

そして初めてバイト代を貰った。

 

そのお金で俺はスケボーを買った。

 

バイトが終わったあと、

近くの公園に行って練習している。

 

少しするとカトウが来たり来なかったり。

 

今はカトウにオーリーというジャンプする技を教えて貰っている。

 

膝を曲げ、跳び上がったと同時に後ろ足で板をはじくと同時に前足で板を擦り上げると同時に後ろ足を上げるとできるらしい。

 

これはすごく難しい、すごく転ぶ、でも楽しい。

 

そういえば初めてカトウにあったときスノボーは転ぶのが楽しいって言ってたな、こういうことか。

 

ちょっとカトウの気持ちが分かった気がする。

 

ある日カトウに聞いてみた。

 

俺「なんでスケボー始めたんだ?」

 

カトウ「冬はスノボーできないからな」

 

俺「じゃあなんでスノボー始めたんだ?」

 

カトウ「ちょっと長くなるぜ」

 

そう言ってカトウは話し始めた。

 

カトウ

「昔先輩に誘われて着いて行ったんだよ

板とかは全部借りて、

初めて滑った場所が普通の山でさ、

リフトも無いから自力で登って。

雪山ってほんとに静かなんだよ

自分の鼓動が聞こえそうなくらい。

それで、先輩先に滑って行っちゃって

俺もなんとか板付けて滑ってみたら

全然できなくてさ。

とりあえず先輩の滑った跡

たどってみたら止まらなくなって

天然のジャンプ台でぶっ飛んで、

ケツから埋まって、

それがめちゃくちゃ楽しくてさw」

 

俺「こけるのが楽しいってそっからか?w」

 

カトウ「まあねw」

 

それからも俺たちはバイトしてスケボーして過ごしていた。

 

なんとなく板に乗るのにも慣れてきた頃

カトウ「障害物飛んだ方がうまくいくんじゃね?」

 

俺はひたすらオーリーの練習をしていたが障害物をとんだことはなく、その場で跳ぶ練習しかしていなかった。

 

俺「なんで?まだ無理だよ」

 

カトウ「やってみないとわからないじゃん!火事場の馬鹿力っていうし」

 

俺「本当かよ…」

 

まんまとカトウに乗せられた気がするが障害物を跳ぶことにした。

 

相手は空き缶、少し距離を空けて対峙する。

 

なぜか頭の中でポケモンクリスタル版のシロガネヤマでレッドと出会った場面を思い出した。

 

そしてBGMが再生される。

 

一気にテンションが上がってきた、俺は地面を蹴りスケボーを走らせる。

 

空き缶の直前で一連の動作を繰り出す。

 

空き缶を跳び越える俺。

 

ヤバい、俺飛んだ!

だが次の瞬間着地に失敗した俺は派手に転ぶ。

 

カトウ「すげー!飛んだじゃん!大丈夫か?w」

 

俺「飛んだああああ!」

 

痛みなど既に無くなり、感動でいっぱいだ。

 

それからも俺はひたすら空き缶を跳び越える。

 

5回に1回、3回に1回、だんだん成功率も上がってきた。

 

カトウはというと、駐車場とかで見かける赤いコーンを飛び越えていた。

 

まあ焦っても仕方ないし俺は俺のペースで頑張ろう。

 

こんな感じで2ヶ月程が経過した。

 

そういえばこの間にカトウは20歳になった。

 

誕生日の日に居酒屋に連れて行ってみた。

 

酔っ払ったカトウはちょっと大変だったが、彼の名誉の為に言わないでおく。

 

11月に入った頃、

いつものように公園で遊んで、ちょっと休憩。

 

カトウが話してきた。

 

カトウ「お前今ちゃんと生きてると思うよ」

 

俺「なんだよいきなりw恥ずかしいなw」

 

カトウ「うるせーw最後まで聴けw」

 

俺「おう、聴かせてもらおうw」

 

カトウ「お前と初めて会ったとき、正直助けられるのか不安だったんだ、惰性で生きてますオーラがすごかったからなw」

 

俺「ひでぇw」

 

カトウ「でも長野に連れて行った次の日の朝、お前すげーいい表情してたんだよ、すげーいい表情でポカーンとしてたw」

 

俺「しかたないだろwさすがにあの自然は感動するわw」

 

カトウ「あそこで過ごしてるうちにに色んな表情になっててさ、へーこんな顔で笑うのかー、とか思ってたんだ、でも今度は東京に帰った後が不安だった」

 

俺「なんで?」

 

カトウ「あそことここのギャップのせいでまた逆戻りしないかと思ってさ、でもお前今生き生きしてるよ」

 

俺「そうなのか、自分ではわからないなw」

 

カトウ「まあそんなもんだw俺は前のお前を知ってるからよくわかる」

 

俺「そうなのか、なんか自信ついたかも、ありがとな!」

 

カトウ「おう!それで俺の持論なんだけどさ、自分が本当にやりたいことやってるヤツとかやりたいことがあるヤツって生き生きしてると思うんだ」

 

俺「まあそれはそうだろ、やりたいことできてるんだからな」

 

カトウ「まあそうなんだけどさ、でも自分が本当にやりたいことが何なのか、知らないヤツって結構いると思うんだよね」

 

俺「あー、たしかに、そう言われればそうかもな」

 

カトウ「というわけで、お前がやりたいとこって何?」

 

俺「俺がやりたいことか…」

 

なんだろう…俺がやりたいことか…長野の景色しか浮かばない

 

俺「長野に行きたい」

 

カトウ「だと思ったw」

 

俺「しょーがねーだろw」

 

カトウ「じゃあスノボー買うか!」

 

なんか認められた感じがして嬉しかった。

 

そしてちゃっかりスノボーに勧誘されてる。

 

娘はどんな顔するだろうか…俺は…

 

俺「よし買うか!」

 

スノボーを買うことにした。

 

それからはバイトのあとは

スケボーをする

 

他に俺のスノボーを選んだりもした。

 

だが俺はスノボーに関して全くの素人だ、とりあえずカトウにいくつか候補を上げてもらい、最後は自分で決めた。

 

カトウもなんか知らんが納得している。

 

スポーツ用品店に行き、目当ての板を見つけた。

 

やっぱり写真でみるより

本物のほうがカッコいい

長野で俺が思ったことも

あながち間違ってはいないようだ。

 

ビンディングも同じメーカーの物にした。

 

靴はちょっと合わなかったから
別のメーカーの靴にした。

 

ついでにボードウェアとゴーグルと

ボード用のカバンも買ったが

 

これらは予想以上に高く

お金は多めにもってきていたつもりが

すっからかんになってしまった。

 

でも満足だ。

 

そして12月。

 

12月に入ったとたん、街中がソワソワし始めた気がする。

 

まあ俺もその一人なんだけど。

 

部屋の中でウェアを着て靴を履いて板を付ける。

 

ビンディングを付けたり外したりする。

 

落ち着かない。

 

テレビではニュースをやっている。

 

アナウンサー「今日東京では雪が2センチも積もりました!!」

 

雪国の人が居たらぶっ飛ばされそうだな。

 

ある日カトウが俺の家に来た。

 

いつもは手ぶらなのに今日はなにやら荷物を持って来ている。

 

俺「おーす、荷物持ってるのは珍しいな」

 

カトウ「おう、板にワックス塗ってやるよ」

 

俺「なにそれ?」

 

カトウ「なんかめっちゃ滑るようになって滑走面まで保護してくれるスグレモノ」

 

俺「まじか!頼むわ!」

 

カトウ「おう、お邪魔しまーす」

 

カトウはビンディングを外し、板だけ持ってベランダに出た。

 

俺「なにやってんの?寒くない?てか寒い」

 

カトウ「ワックス体に悪いらしいからさ」

 

そう言ってロウソクの塊のような物とアイロンのようなものを取り出した。

 

カトウ「コンセント差してー」

 

俺「はいよー」

 

そしてカトウはワックスをアイロンで溶かし、それをアイロンで伸ばしはじめた。

 

なるほど、これで滑るようになるのか。

 

そして次の日、またカトウが来た。

 

俺「おーす」

 

カトウ「おーす」

 

カトウは昨日塗ったワックスをプラスチックの板で剥がし始めた。

 

俺「え、なにやってんの?」

 

カトウ「こういうもんなの、剥がせるやつは余分なワックスだからね」

 

俺「そういうもんなのか、なんかもったいないな」

 

カトウ「まあねw」

 

最後にブラシのような物で

仕上げて完成のようだ。

 

なるほど

 

すごくサラサラな手触りになった気がする。

 

早くスキー場に行きたい。

 

スケボーで慣れてるからスノボーはたぶん簡単に滑れるだろう。

 

俺「スケボーとスノボーって同じ感じ?」

 

カトウ「それが全然違うんだよねw」

 

俺「え、そうなの?」

 

カトウ「重心下げれば安定するってのは似てるかもね」

 

俺「まじかー、なんだー…」

 

そんな感じで1週間くらい経ったある日、カトウから電話が来た。

 

カトウ「おーす、予定決まったぜー」

 

俺「まじ!いつ?」

 

カトウ「12月22日から29日くらいまでだけど大丈夫だろ?」

 

俺「大丈夫だよ!」

 

カトウ「よっしゃ!それじゃ21日の夜くらいに向こうに着く感じでいこうぜ!」

 

俺「了解!」

 

やっと長野に帰るのが現実のものとなった。

 

つい4ヶ月前に行って来たばかりなのに遠い昔のように感じる。

 

楽しみすぎて既に心拍数が上がってきた。

 

またあそこに行けるのか、どんな景色になっているのだろう。

 

そして、そわそわしながら出発の日を迎えた。

 

さすがに冬にバイクでは行けない、今回は電車に乗る。

 

浅草橋でJRに乗り換え、電車を乗り継ぎ長野に向かう。

 

スキーやスノボーを持っている人もちらほら見かける。

 

俺の顔は勝手にニヤついてくるようだ、カトウがたまに噴き出す。

 

カトウ「なに変顔してんだよw」

 

俺「は?してないしw」

 

カトウ「ニヤニヤしすぎw」

 

でもカトウも嬉しそうだ、もう楽しみで仕方がない。

 

そして夜7時頃駅に着いた。

 

バイクで通った道、雪で覆われているが間違いない、帰ってきた。

 

いや、ちょっと寒すぎるが。

 

カトウは電話をかけている。

 

恐らく吾郎さんか夏美さんに迎えを頼んだのだろう。

 

20分程経った頃、見覚えのある車が近づいてきた。

 

降りて来たのは、娘だった。

 

俺「え、無免許?」

 

娘「免許とったわwいきなりそれってどうなの?w」

 

俺「ごめんごめんw久しぶり!」

 

カトウ「来たぜー!」

 

娘「お帰り!」

 

この一言で目頭が熱くなる、ヤバいヤバい

 

娘の運転する車で家に向かう。

 

俺は雪道を運転したことがない

 

俺「雪道運転できるのすごいな」

 

娘「そう?まあここにいたら嫌でも運転できないとだからねー」

 

俺「そうだよなー」

 

娘「あららららら」

 

車の挙動がおかしい、え?マジ?

 

娘「この車軽いから滑るんだよねー」

 

何事もなかったかのように体制を立て直す、すげぇ!

こうして無事に家に着いた。

 

カトウ・俺「お邪魔しまーす!」

 

吾郎さん「いらっしゃい!」

 

娘「外さむーいw」

 

だが家の中はとても暖かい。

 

吾郎さんなんて半袖を着ている。

 

俺「めっちゃあったかいなー」

 

娘「でしょ!俺くん達が割ってくれた薪のおかげだよ!」

 

俺たちのやったことがこの一家の役に立ったのか…感動だ…!

と思ったがよく考えたら薪を割ったのは薪割り機だった、まあ考えないでおこう。

 

とりあえず夕飯をご馳走になる。

 

肉じゃがとか最高じゃね?

そして風呂に入って温まる。

 

カトウも風呂から上がってきてしばし談笑。

 

俺「そういえばいつ免許取ったんだ?」

 

娘「8月に合宿で取ったんだよ」

 

カトウ「合宿ってどこで?」

 

娘「香川まで行って来たよ」

 

カトウ・俺「へーーえ」

 

俺たちは相当なアホヅラだったらしく、

娘はこれがツボにはまったようで笑ってた。

 

しばらくして落ち着いてきたところで

娘「じゃー明日に備えて寝ますか!」

 

カトウ「そうしますか!」

 

俺「おっす!」

 

さすがに移動だけでも疲れたのか、すぐに寝ることができた。

 

翌朝、目覚ましが鳴るちょっと前

 

弟「おきろー!」

 

俺「ぐはっ」

 

カトウ「うげっ」

 

壮絶なモーニングコールで目が覚めた。

 

カトウは一瞬死んだ。

 

1階に降りると朝食が用意してある。

 

家の中は既に暖かい。

 

俺「薪ストーブってあったまるの早いの?」

 

娘「いや、つけっぱなしだよ」

 

俺「薪って一晩持つのか、すげぇ」

 

カトウと弟も降りてきた

 

娘「おはよー!」

 

カトウ「おはよーう」

 

吾郎さんと夏美さんも降りてくる。

 

夏はもうとっくに畑に行っている時間だが冬はゆっくりできるようだ。

 

カトウ・俺「おはよーございます!」

 

吾郎さん夏美さん「おはよー!」

 

一同揃って朝食。

 

こんなに大勢で食べるのは初めてかもしれない。

 

なんかほっこりしますなぁ。

 

朝食を終えて早速準備にとりかかる。

 

と言っても着替えるだけだが。

 

やっとボードウェアの出番だ。

 

下にはヒートテックとジャージを着ている。

 

準備が終わった午前9時、みんなで車に乗り込む。

 

そして2.30分程で到着。

 

俺は昨日受け取った夏のバイト代でリフト券を購入。

 

スポーツ店で選び抜いたパスケースに入れてニヤニヤする。

 

みんなもリフト券を買ったようだ。

 

スノボーはカトウと俺で娘一家は全員スキーヤーだった。

 

吾郎さん「よし、行こうか!」

 

カトウ「おっしゃー!」

 

夏美さん「12時くらいにここの食堂集合ね!」

 

俺「了解っす!」

 

俺はスノボーを装着する練習はかなりしてきた。

 

慣れた手つきで板をつける。

 

娘「なんかそれっぽいよ、いいねぇww」

 

娘からも特にお咎め無しだ。

 

さてこっからどうすればいいんだ?

 

俺「前進めないんだけど?」

 

カトウ「最初は片方外しておくんだよw」

 

俺「なるほど」

 

右足を自由にすると雪を蹴って進む。

 

これが案外疲れる。

 

とりあえず片足で蹴って進む練習をしばらくやる。

 

これができればリフトに乗るとき焦らなくて済むそうだ。

 

20分程やってなんとなくコツを掴んで来たのでリフトに乗る。

 

なるほど、リフトに乗るときは必ず片足を外して乗るのか。

 

こうして俺たちはゲレンデに到着した。

 

(リフトから降りるとき一回こけた)

 

とりあえずカトウの指導を受ける。

 

最初は前を向いてそのままゆっくり滑り落ちる練習。

 

エッジを立てて止まったり、エッジを外して滑ったりを繰り返す。

 

止まるのが難しい、どうしても後ろに倒れてしまう。

 

だが30分程でなんとなくコントロールできるようになってきた。

 

次はそれを左右に動きながらやってみる。

 

ちょっとスノボーに近づいてきた。

 

これも30分程やってちょっと休憩。

 

その次は後ろ向きで同じ事をやる。

 

後ろ向きに滑ってみると

もう後ろにこけまくる、

逆エッジというものらしい、

とにかく痛い、痛いが繰り返す。

 

やはり繰り返すことでコツを掴める。

 

ケツを代償に俺は逆エッジをなんとなく克服した。

 

次はターンの練習。

 

ここまでくればスノーボーダーと言っても過言ではないだろう。

 

だが現実は甘くない、ひたすらこけまくる。

 

両足固定されている恐怖心のせいか体が強張ってしまう。

 

しかしこれも繰り返しだ。

 

だんだん足ではなく体重移動で
曲がることを覚えて行く。

 

ブレーキができるようになれば

とりあえず一安心だ、

だんだんスピードを出しても

上手く曲がって止まれるようになってきた。

 

しかし調子に乗っていると

逆エッジでケツにダメージが蓄積されていく。

 

ケツの痛みをリミッターにして練習を繰り返す。

 

昼ごはん前にはなんとなくターンができるようになった。

 

カトウ「とりあえずこれで一応滑れるようにはなったなw」

 

俺「余裕だぜw」

 

カトウ「風呂が楽しみだなw」

 

何を言っているのだろう?

 

とりあえず昼飯の時間なので食堂へ向かった。

 

食堂に着くと娘一家は集合していた。

 

娘「お、きたきたー!」

 

カトウ「うぃーっす!」

 

俺「おいーっす!」

 

娘「滑れるようになった?」

 

俺「余裕だぜ!」

 

娘「ほんと!じゃあ午後は一緒に滑ろうね!」

 

俺「おう!」

 

とりあえず昼飯を食べてちょっと休憩。

 

1時頃に再びゲレンデへ。

 

カトウ「おーし行くかー!」

 

俺「よっしゃー!」

 

娘「最初はゆっくり滑ろうね」

 

結局娘が一番早かった。

 

カトウも早かった。

 

何が違うんだろう。

 

人が居るので避けて滑っているから減速するのは当たり前だ。

 

しかしカトウや娘は曲がりながらも加速しているように見える。

 

俺「なーどうやって曲がってんの?」

 

カトウ「あぁ、カービングターンっていうやつだよ」

 

娘「エッジだけで曲がる感じかな?」

 

カトウが図で説明してくれた。

 

つまり俺は面で曲がってカトウは線で曲がっている感じなんだそうだ。

 

カトウ「まあ体重移動ができるようになれば勝手にできるようになるよ」

 

娘「そーそー、練習あるのみ!」

 

俺「そうなのか、早く上行こうぜ!」

 

こうして俺たちは滑りまくった。

 

娘やカトウは何やら技を繰り出している。

 

カトウは板の反発を利用してジャンプして回ったりしている。

 

娘はジャンプ台から飛んで回ったりしている。

 

かっけぇ

 

俺はとりあえずターンに磨きをかける。

 

右に曲がるときは結構いい感じに曲がれるようになってきた。

 

しかし左が難しい。

 

おそらくつま先は可動域が広いから足で微調整できるのだろう。

 

しかし踵はほぼ可動しないから微妙な体重移動が必要なのだと思う。

 

俺は左のターンを特に練習した。

 

うしろからカトウに俺が滑った痕を見てもらう。

 

右折のほうはだいぶ線に近づいてきたそうだ。

 

しかし左折はまだ面を引きずった痕のような感じだ。

 

そんな感じで1日目は終了。

 

帰り道温泉に寄る。

 

カトウ「だいぶうまくなってきたなー」

 

俺「だろ!」

 

カトウ「お前負けず嫌いだよなw」

 

俺「まあねww」

 

そして風呂に入るとカトウや弟が爆笑している。

 

なにごとかと思ったら俺のケツが青くなっていた。

 

なるほど、カトウが言っていた風呂が楽しみだ、とはこのことか。

 

俺「うわぁ!なんじゃこりゃ!」

 

カトウ「お前ケツで滑ってたようなもんだからなw仕方ないだろw」

 

弟「だっせー!w」

 

俺「うるせー!w」

 

他に客も居なかったので、大きな声では言えないが、俺たちははしゃぎまくった。

 

風呂から上がると、食事コーナーに行って夕飯を食べた。

 

帰り道はみんな疲れたようで静かだった。

 

弟と娘は既に寝ているようだ。

 

カトウも頭がカクンカクンしている。

 

俺は不思議と眠くなかったので窓から景色を眺めていた。

 

家に着いたのは夜8時過ぎ。

 

みんなはすぐに眠ったようだ。

 

俺もしばらくスノボーのイメージトレーニングをして寝た。

 

翌朝、さすがにスケボーで鍛えていたつもりだったが少し筋肉痛になった。

 

まあ動けない程ではないので無問題だ。

 

今日は3人で家のすぐ近くにあるスキー場に行くことにした。

 

雪が割と降っているが問題は無いそうだ。

 

リフト券を購入してゴーグルを装着。

 

ゲレンデに出る。

 

少し視界が狭いようだ、まあすぐに慣れるだろう。

 

軽くストレッチをして滑り始める。

 

昨日よりもスムーズに滑れていると感じる。

 

イメトレのおかげだろうか。

 

カトウ「昨日よりうまくなったじゃん!」

 

娘「結構才能あるかもねww」

 

俺「…」

 

(こんなときどんな顔すればいいか分からないの)

 

とりあえず笑っておく。

 

カトウにそそのかされてジャンプ台に挑戦する羽目になった。

 

とりあえずまっすぐ滑って行けば大丈夫だそうだ。

 

空き缶を思い出すなぁ、そんなことを思いながら滑り始める。

 

ジャンプ台に突入。

 

体が宙に浮いた。

 

時間の流れが遅くなる。

 

ゆっくりと地面に近づき、着地。

 

2秒も飛んでいないはずなのに、記憶に刻まれた。

 

ハーフパイプで飛んでる人を見たことがある。

 

以前はなんで飛ぶんだろう?と疑問に思ったがこれで少し分かった、これは飛びたくもなるな。

 

カトウ「ちゃんと着地までできたじゃん!どうだった?」

 

俺「超おもしれー!ヤバい!」

 

娘「だろだろー?」

 

そんな感じでこの日はちょっと早目、午後3時過ぎくらいに切り上げた。

 

帰ると畑が一面白い平原になっていた。

 

カトウはさっさと家に入ってしまった。

 

寒いのは苦手なようだ。

 

犬は俺たちが組み立てた小屋に入っている。

 

ちょっとニヤける。

 

4時くらいになると急に冷え込んできた。

 

娘「雲がないからねー、今日は寒くなるぞーww」

 

俺「マジかー、どれくらい?」

 

娘「んー、マイナス20度くらいかな?」

 

俺「それは寒すぎだろw本当は?」

 

娘はきょとんとしている、どうやらマジらしい、マジか…

 

でもせっかくなのでマイナス20度に挑戦してみる。

 

頭を濡らして行くと面白いらしい。

 

なんかジャージが白くなってきたぞ、すげぇ、髪が凍った!

 

一通り楽しんでから家に入る。

 

娘「どうだった?」

 

俺「マックの冷凍庫みたいだったw」

 

カトウ「よく外行こうと思ったなw」

 

カトウはこたつでぬくぬくしている。

 

娘「あはははw」

 

それからもスキー場に行ったり外で雪遊びしたりストーブで餅焼いたりして過ごした。

 

吾郎さんと夏美さんは実家に帰った。

 

孫は連れて行かないのか?と思ったが帰ってくるときに祖父母も一緒に来るそうだ。

 

そして、その日夜にまたスラムダンクを読んでいると、娘に声をかけられた。

 

娘「ねぇ、また星見に行かない?」

 

俺「お、いいねぇ」

 

上着を着て外にでる。

 

俺「うお、さみー!ww」

 

娘「弱いぞー!ww」

 

そんなこんなで星がよく見える場所に来た。

 

そして娘は懐中電灯を消した。

 

息を飲む光景とはこれのことなんだな、何度見ても慣れない、世界の大きさ。

 

俺「…すげー」

 

星空に呑まれないように無理やり出した言葉だと思う。

 

無言のままで居た方が良かったか?でもまだ今の俺には受け止め切れないような気がする。

 

怖いほど澄んだ空だ。

 

娘「すごいでしょ?」

 

俺「うん、すごい」

 

娘「冬の方が空気が澄んでるから星が綺麗に見えるんだよ」

 

俺「へー…この星空は冬に本領発揮するんだ」

 

娘「そうなんだよ、夏は見せない方が良かったかな?w」

 

俺「いや、夏のを見てないと今号泣だったかもw」

 

娘「やっぱあの時泣いてたんじゃんw」

 

俺「おう!w」

 

娘「あははw嬉しいw」

 

俺「なにが?」

 

娘「私が好きなものを見て一緒に感動してくれる人ができてさ」

 

俺「カトウには見せてないの?」

 

娘「カトウくんは誘わなくても勝手に見に行ってるしw俺くん誘わないと外に出なそうだしw」

 

俺「余計なお世話だw」

 

娘「俺くんはすごいね」

 

俺「は?」

 

娘「カトウくんから聞いたんだ、前の俺くんの事。

 

前は根暗で表情も暗かったって」

 

俺「…」

 

娘「でもほんの何ヶ月かですっかり変わったね、自分を変えるのってほんとにすごいと思う」

 

俺「変えたっていうより変えられたんだよ、ここの環境にさ」

 

娘「でもそれを受け入れられるだけの力があったのはすごいよ、見て見ぬ振りするだけなら誰にでもできるし」

 

俺「そうなのかな?」

 

娘「初めて喋ったとき覚えてる?」

 

俺「なんだっけ、朝飯のときかな?」

 

娘「お、よく覚えてたねぇwあのときさ、俺くんが私と関わろうとしてくれたでしょ?だから私も俺くんと話してみたいなーって思ったんだよ」

 

俺「そっかー、なるほどなぁ」

 

娘「つまりはそういうことだよ、受け入れる気持ちが無いと周りからも受け入れられないし、世界は平凡でつまらないものにしかならないと思う、そしてたぶんそのことにも気づけない。ジャンプ台だってそうだよw」

 

俺「それはわかりやすいなw」

 

娘「あれを断ってたら俺くんはあの楽しさを知らないまま一生を終えることになるところだったよw」

 

俺「それはもったいないなwでもやってみてどうしても受け入れられないことってあるじゃん」

 

娘「食わず嫌いはよくないってことかな?アレルギーは仕方ないけど。

 

なんとなく嫌だなー、と思ってて、

でも頑張ってそれに挑戦してみたけど

やっぱりダメだった、

っていうのは全然オッケーだと思う。

 

嫌な事にも挑戦したっていう事実は残るからね、それでやっぱこれおもしろいじゃん!ってなればラッキーだしおもしろくなければまた次に挑戦だよ」

 

俺「なるほどなー」

 

娘「俺くんの昔の事もちょっと聞いたよ、カトウくんも詳しくは知らないけどって言ってたけど」

 

俺「カトウめw」

 

娘「でもこの話聞いたの今年の冬なんだ、びっくりしたよ、人に裏切られた人がまた人と関わろうとするなんて」

 

俺「ここに来たら過去とかどうでも良くなってさw」

 

娘「すごいね、俺くんはちゃんと前に進んでるよ、私は足踏みしてばっかだなぁ…」

 

俺「カトウのこと?」

 

娘「まあねーw」

 

俺「そういうのは俺に相談されても無理だからw」

 

娘「分かってるってw」

 

俺「…」

 

(ギャー)

 

俺「とりあえず後悔しないようにするしかないんじゃない?まあ後悔するかしないかなんてやってみないとわからないけど」

 

娘「てことはやるしかないんだね」

 

俺「やらないって選択肢もあるぞ」

 

娘「それはちょっとなー」

 

俺「やらない後悔よりやる後悔ってやつだなw」

 

娘「それだねwでもまだ言わない、カトウくんが本当にこっちに住むことになったら言う」

 

俺「気長だねw」

 

娘「別に今の感じに不満を持ってるわけじゃないんだ、カトウくんとは一生友達でいられると思う。もちろん俺くんもねw」

 

俺「うれしいねぇw」

 

娘「まあ先のことはその時に決めればいいやってことですなー」

 

俺「明日のことなんて分からないからな」

 

娘「そーそー」

 

やっぱりここに来たら落ち着く。

 

時間がゆっくり流れているかのようだ。

 

変に焦っても仕方がないと思えてくる。

 

お互い喋るのをやめて上を見る。

 

すると光の筋が一筋すうっと通った。

 

娘「今の見た!?」

 

俺「見た見た!すげぇ、初めて見た!」

 

宇宙から流れてきた塵が大気圏で燃え尽きるときに光っているだけ、頭では理解しているつもりだ。

 

しかし感情がどうも抑えられない。

 

また涙が一筋流れる。

 

まあ暗いから大丈夫だろう。

 

しかし現実は甘くない、娘が俺を照らしやがった。

 

こいつ分かってやってるだろ。

 

娘「あ!また泣いてる!w」

 

俺「うるせーwわりーかw」

 

娘「お、今回は否定しないんだねww」

 

俺「おう!感情に素直になったほうが色々見えてくるしなんか楽になることに気づいたからなw」

 

娘「ほほう、いいこと言いますなw」

 

俺「だろwだから泣きたいときは泣くし笑いたいときは笑うのさw」

 

娘「それが一番健康的だねw」

 

俺「おう!」

 

やっぱりここはいい、来る度に色々な表情を見せてくれる。

 

やっぱ色んな表情が見れたほうが面白いよな。

 

一晩ここで星空を眺めていたいが気温がそうさせてくれない。

 

歯がガチガチ鳴り出した。

 

娘「寒そうだねw」

 

俺「ちょーさみーw」

 

寒さで声まで震える。

 

娘「じゃあそろそろ戻ろっか」

 

俺「さんせえぇぇぇ」

 

娘「風邪引かないでねw」

 

そして家に帰り、二人でストーブの前で温まる。

 

小さな火がゆらゆらと燃えている。

 

時々何かのはじけるような音がする。

 

娘「木の中に入ってる空気が膨張してはじけてるんだよ」

 

俺「へーえ」

 

二人とも特に喋らない。

 

しかし重い空気ってわけでもない。

 

落ち着く。

 

娘「あったまった?」

 

俺「おー」

 

娘「じゃあそろそろ寝よっか」

 

俺「そうしましょー」

 

娘「よし、おやすみ!」

 

俺「おやすみ!」

 

娘は部屋に入って行き、俺も布団に潜り込む。

 

流れ星をひたすら思い出してニヤニヤする。

 

こうして俺は眠りについた。

 

翌朝。

 

弟の襲撃も無く、目覚ましの音で目が覚める。

 

カトウは目覚ましを止め、また眠る。

 

昨日の夜空は吸い込まれそうなほどに澄んでいたのが一変、今朝は結構吹雪いているようだ。

 

下に降りると娘が朝食を用意している。

 

これも見慣れた光景になってきた。

 

俺「おはよー」

 

娘「おはよー、今日は天気すごいよ」

 

俺「だねー、今日は外に出られなそうだ」

 

娘「まあまあそんなこと言わずにw」

 

なんだろう、吹雪の時はこたつに入ってゴロゴロするべきじゃないのか?

 

弟も降りてきた

 

弟「おはよー」

 

娘「おはよー」

 

俺「カトウならまだ寝てるよ」

 

弟はカトウが寝ている部屋に

入って行き

少ししてカトウの声が聞こえた

 

カトウ「ぐえっ」

 

そしてカトウと弟が降りてきたところで朝食を食べる。

 

朝からシチューってのもいいもんだ。

 

俺「よく朝からこんなの作れるなー」

 

娘「昨日の夜から仕込んでおいたのさw」

 

俺「へーえ、すげぇもんだ、いただきまーす」

 

カトウ「…いただきまーす」

 

眠そうだなおい

 

娘「召し上がれ!」

 

朝食も食べ終え、こたつでゴロゴロしていると娘がなんか言ってきた。

 

娘「これからかまくらに行きます!」

 

俺「えー、絶対寒すぎるでしょ」

 

カトウ「お前吹雪のときにかまくら入るの好きだよなー」

 

弟は冬休みの宿題をやると言って部屋に入って行った。

 

娘「チッ、一人逃げたがまあいいか…」

 

なんかキャラ変わってるぞ

 

こたつの布団を取られ、

渋々娘に従いボードウェアを着る。

 

カトウは弟の宿題見てやるとか言って

上に行こうとしたら娘がボソッと

 

娘「お昼ご飯…」

 

カトウ「行かせていただきます!」

 

なるほど、娘は中々ブラックな面も持ち合わせているようだ。

 

こうして支度を済ませ、俺たちは外に出た。

 

俺「うおっ、すげー風だな」

 

カトウ「寒いよー…」

 

娘「ほらほら行くよ!」

 

前に遊んだときに作ったかまくらに入る。

 

3人入ってもまだ少し余裕がある。

 

かなり大きいヤツだ。

 

入り口はビニールシートで塞ぐ。

 

暗い。

 

と思ったら娘が大きめのロウソクを取り出した。

 

俺「一本じゃ足りないだろ」

 

娘「大丈夫大丈夫」

 

ロウソクに火をつける。

 

思ったよりかなり明るい。

 

雪に囲まれてるのに暖かさすら感じる。

 

俺「へー、一本でも明るいんだな」

 

娘「雪で光が反射するからだよ」

 

俺「なるほどなー」

 

カトウは眠そうにしている。

 

寝たら死ぬぞー!とか言って遊ぶ。

 

娘「はいどうぞ」

 

そう言って娘はボトルからココアを注いでくれた。

 

これがまた格別。

 

俺「なにこれ、超うまいんですけどw」

 

娘「特性ブレンドだからねw」

 

カトウ「これがあるからやめられないわw」

 

調子のいいやつめwまあ俺も人のこと言えないけど。

 

俺「これはただのココアじゃないな?」

 

娘「だから特性ブレンドなんだってw」

 

カトウ「これ毎回思うけどどうやって作ってんの?」

 

娘「教えなーいw」

 

なるほど、これを飲むには

かまくらに来なければ行けないのか、

それなら来て良かった。

 

娘が前の夜に言っていたのはこういうことなのかな?

 

俺「かまくらの中って意外とあったかいのな」

 

娘「人の暖かさってやつかな?w」

 

カトウ「こたつが恋しいぜ…」

 

娘「ほらほら、もう一杯どうぞ!」

 

カトウ「お!これはこれは!」

 

調子のいいやつめwなんだかんだ言ってカトウも楽しそうだ。

 

他にもみかんやら甘酒やらをいただく。

 

やはり外で食べるのは一味違うな。

 

そしてロウソクも燃え尽きてきたところで家に帰る。

 

俺「いやー、思ったより全然楽しかったわww」

 

娘「だから言ったでしょ?食わず嫌いは良くないってww」

 

カトウ「いやー、楽しかった!」

 

調子のいいやつめw

そして昼ごはんを食べる。

 

俺「午後は何しようかなぁ」

 

カトウ「暇だなぁ」

 

娘「じゃあカトウくんギター弾いてよ」

 

カトウ「じゃあちょっと弾いてみるかー」

 

俺「カトウギター弾けるんだ」

 

カトウ「ちょっとだけね」

 

娘がギターを持ってきた。

 

カトウがピアノを使ってチューニングを合わせ、弾き始めた。

 

曲はカノンだった。

 

ソロギターというのだろうか?普通にうまい。

 

4分ほどの曲を弾き終える。

 

俺と娘は拍手。

 

俺「すげー、普通にうまいじゃんw」

 

カトウ「照れるぜw」

 

俺「別の曲もなんか弾いてよ」

 

カトウ「そうだなぁ、じゃあ俺が弾くからお前歌えよw」

 

俺「えっ」

 

娘「いいねー!」

 

娘は弾き語り用の楽譜を持ってきた。

 

カトウが選んだ曲はレミオロメンの「粉雪」。

 

なるほど、季節的にピッタリだ。

 

俺「いやいや、声出ないから」

 

カトウ「別に俺たちだけだし問題ないだろw」

 

俺はそこで娘の言葉を思い出した。

 

俺「よーし歌うか!笑うんじゃねーぞ!w」

 

娘「いぇーい!」

 

パチパチ

カトウが弾き始める。

 

最初の方は音程は怪しいがなんとか歌える、そしてサビを迎えた。

 

俺「こなああああぁぁぁ!!!」

 

カトウ「あははははw」

 

娘「ゆきいいいいねええええ!w」

 

娘が一緒に歌い始めた。

 

うめぇ

 

カトウ「いいぞお前たち!w」

 

何かが吹っ切れた俺は娘と笑いながら熱唱し、歌い切った。

 

俺「恥ずかしーw」

 

娘「楽しかったーw」

 

そんな感じでしばらくカラオケ大会を続けたが、さすがに声も枯れてきたので終了。

 

すごく清々しい気分だ。

 

娘は夕飯の支度をしにいった。

 

俺たちは暇になってしまった。

 

外を見ると吹雪は収まって雪がちらちらと降っている。

 

俺はカトウに提案してみた。

 

俺「なあ、除雪してみたいんだけど」

 

カトウ「まあ世話になってるし、やるか!」

 

俺たちはまたボードウェアを着て外に出た。

 

ちなみにカトウは動けるなら寒くてもいいらしい。

 

カトウ「じゃあどうせならお前ダンプ使ってみろよ」

 

俺「は?ダンプ!?あんの?」

 

カトウ「違うわ!wこれこれ」

 

ダンプとは雪を乗せて運ぶ道具のことだった。

 

スコップよりも大量に運ぶことができる。

 

しかし柔らかい雪ならそのまま突っ込めるが、固まってしまった雪の場合はスコップで崩してからでないとすぐに壊れてしまうそうだ。

 

なのでカトウに雪を崩してもらい、俺はそれを運んで除雪することにした。

 

俺は雪の上を歩くのに慣れていないので、何度も転びながら雪を運ぶ。

 

雪国の人はこれが生活の一部なんだなーとか考えながら雪を運ぶ。

 

たまにカトウと交代して雪を崩したりもする。

 

四角いスコップもあるんだな、新しい発見。

 

かなり息が上がってきた頃、とりあえず生活の邪魔になりそうだった雪は無くなったようだ。

 

夕飯ができたようで、娘が呼びに来た。

 

娘「晩ご飯できたよー、すごーい、きれいになったね!」

 

カトウ「腹減ったー!」

 

俺「おーす、これ毎日やってんの?」

 

娘「毎日はやってないよ、ここはそんなに雪降らないからね」

 

俺「そうなのか、でも除雪って大変なんだな、雪こんなに重いとは思わなかった」

 

娘「重い雪はほったらかしてたやつかなw」

 

俺「なんだw」

 

先に風呂に入ってから夕飯を食べる。

 

キムチ鍋だ。

 

やっぱり体を動かした後の飯はめちゃくちゃうまい。

 

俺「はーー、うまかったー」

 

カトウ・俺・弟「ごちそうさま!」

 

娘「おそまつさまですw」

 

カトウ「弟今日何してたの?」

 

弟「ポケモンしてたw」

 

娘「ちょっと宿題は?見せてごらん」

 

弟「ちゃんとやったよ?」

 

これはやってないな。

 

俺には分かる。

 

娘「じゃあ今年はもう教えなくていいんだね?教えてって言ってももう教えないから」

 

弟「う、大丈夫だよ…」

 

がんばれ、弟

 

明日は最終日だ。

 

明日帰るんだ。

 

でも夏東京に帰る前のような嫌な感じはしない。

 

ここにまた来れて良かった、そう思う。

 

程よい疲れを感じつつ俺は眠った。

 

そして最終日の朝を迎えた。

 

今日は午前中スキー場に行き、午後に東京に出発する予定だ。

 

やっぱり少し寂しい。

 

まあまた戻ってくるさ。

 

準備を終わらせ、スキー場に向かう。

 

リフトに乗り、ゲレンデに着いた。

 

俺「よし、行こうぜ!」

 

カトウ「おう!」

 

娘「ついてこれるかな?w」

 

俺はかなり速いターンもできるようになっていた。

 

たまに体を傾け過ぎて板を踏み切れず、エッジが外れるような感じで転ぶこともあるが、それでも笑いが絶えない。

 

転ぶのがおもしろいってのがかなり分かった気がする。

 

そしてあっという間に帰る時間になってしまった。

 

娘に駅まで送ってもらう。

 

娘「じゃあまたね!」

 

カトウ「おう!」

 

俺「またな!」

 

とは言ってみたもののやっぱり寂しいものは寂しい。

 

でもまたここに来ることを目標にすれば頑張れそうだ。

 

自分が帰る場所ってのがはっきりしてるのはいいな。

 

ホームに電車が入ってくる。

 

2両編成の短い列車だ。

 

乗客も数える程しかいない。

 

荷物を上に乗せ、窓を開ける。

 

俺「また来るから待ってろよ!」

 

娘「うん、待ってる!」

 

カトウ「てかお前東京来たら?」

 

娘「それもいいねw」

 

なんだと?

 

出発の時間が来たようだ、ゆっくりと列車がホームを離れる。

 

娘はまだ手を降っている。

 

そして、見えなくなった。

 

カトウ「早かったなー」

 

俺「一瞬の出来事みたいだった」

 

カトウ「また来ような」

 

俺「おう!」

 

今年の冬に学んだことを思い返してみる。

 

1.転ぶことを恐れないで大胆にやってみる

2.たぶん転ぶ、転び方がだんだんうまくなる、転ばなくもなってくる

3.転ぶと周りの笑いが取れることもある

4.ゆっくり立ち上がる

5.前を向いてまた滑り出す

こんな感じかな、これは覚えておくことにしよう。

 

スノボーに限った話ではないが、初心に戻って気づくことってのもあるはずだ。

 

明日からまた東京の生活が始まる。

 

明日はどんな日になるだろうか、自分っていうゴーグルが無ければ世界はもっとクリアに見えるのだろうか。

 

そんなことを考えながら田舎の列車に揺られる。

 

カトウはもう眠ったようだ。

 

俺も明日に備えて少し寝ることにした。

 

終わり

 

 

前日談:

【はじめての人】

http://peterpanchannel.com/post-2171/

 

 

引用元:

冬にまたあそこに行ってきた話

https://hayabusa3.5ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1413993496/

 

 

 


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